「今日こそ勉強しよう」が続かないのは、やる気のせいじゃない。研究でわかった“決め方”のコツ
「今日こそ勉強しよう」と朝に決めたのに、夜になってみたら、やっていない。次の日も、その次の日も。そのたびに「自分はやる気がない」「意志が弱い」と落ち込んでいませんか。
でも、自分を責める必要はありません。心理学の研究では、「やる」と決めたことができないのは、とてもよくあることだと分かっています。そして、できるかどうかを分けるのは、やる気の強さよりも「どう決めたか」のほうだということも分かってきました。
この記事では、研究で効果が確かめられている「決め方」のコツを、家ですぐ試せる形で紹介します。ペガサスのショート動画「勉強のコツ #1」でも、同じ話を約1分で紹介しています。
1「やる」と決めても、約半分の人はやらない
まず、ちょっと意外な数字から紹介します。
イギリスの心理学者シーランは、「やろうと思ったこと」と「実際にやったこと」の関係を調べた研究をまとめました。その結果、「やる」と決めた人のうち、実際には行動しなかった人は、真ん中の値でおよそ47%。ほぼ半分です。
この数字は運動や健康診断についての研究なので、勉強にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、大人でも「決めたのにできない」が半分近くある、ということは言えます。心理学ではこの「決めたこと」と「やったこと」の間のすき間を、意図と行動のギャップと呼んでいます。
つまり、「今日こそ」が続かないのは、あなただけの問題ではありません。多くの人が同じところでつまずいています。
2足りないのは、やる気ではなく「決め方」
では、どうすればそのすき間を埋められるのでしょうか。ヒントは、ふだんの決め方そのものにあります。
「今日こそやる」と決めたとき、決まっているのは「やる」ということだけです。いつ、何をきっかけに始めるのかは決まっていません。だから夜になって、テレビやスマホ、部活の疲れがある中で、「今からやるか、あとにするか」をその場でもう一度決め直すことになります。そして、その場の判断は、たいてい楽なほうに流れます。
「夜8時にやる」と時刻を決めるのは一歩前進です。ただ、毎日8時ちょうどに机の前にいるとは限りません。8時に夕飯を食べていたり、まだ部活から帰っていなかったりすれば、また「いつやるか」を考え直すことになります。
研究者たちが注目したのは、この「その場で決め直す」部分でした。始めるきっかけを前もって決めておけば、決め直さずにすむのではないか、と考えたのです。
3「もし〜したら、〜する」という決め方
そこで生まれたのが、「もし〜したら、〜する」という形で決めておく方法です。心理学者ゴルヴィツァーが提案したもので、専門的には「実行意図」、一般にはif-then(イフ・ゼン)プランニングと呼ばれています。
ポイントは、前半の「きっかけ」です。「夕飯を食べ終わる」という場面を先に決めておくと、その場面が来たときに、やることを思い出しやすくなります。あらかじめ決めておいた行動に、考え直さずに取りかかりやすくなるのです。
たとえるなら、未来の自分に「合図」をセットしておくようなものです。合図が鳴ったら動く、と決めてあるので、そのときの気分にあまり左右されません。
4研究でわかっていること
「もし〜したら」の効果は、これまでにたくさんの実験で調べられてきました。大事なものを3つ紹介します。
ただし、これは魔法ではありません。研究が示しているのは「決めたことに取りかかりやすくなる」ということで、「成績が上がる」ことを直接示したものではありません。とはいえ、勉強は取りかからなければ始まりません。最初の一歩を軽くしてくれる道具として、試してみる価値は十分にあります。
5家で試す「もし〜したら」の作り方
ここからは実践編です。次の4つの順番で作ると、うまくいきやすくなります。
きっかけは「毎日かならず起きること」にする
時刻より、毎日かならずある行動の区切りがおすすめです。「夕飯を食べ終わったら」「お風呂から出たら」「塾から帰ってカバンを置いたら」のように、毎日ほぼ同じ順番で起きることを選びます。
やることは小さく、数えられる形にする
「英語を勉強する」ではなく「英単語を5個」。「数学をやる」ではなく「計算プリントを1枚」。終わったかどうかがはっきり分かる大きさにします。もっとやれそうな日は、そのまま続ければ大丈夫です。
まずは1つだけにする
いきなり3つも4つも決めると、覚えていられません。1つが毎日できるようになってから、次を足していきましょう。
決めたら、1回声に出す
研究でも、声に出したり思い浮かべたりすると効果が大きくなっていました。「もし夕飯を食べ終わったら、英単語を5個やる」と、一度口に出してみてください。紙に書いて、机の前など目に入る所に貼っておくのもよい方法です。
こんな「もし」が作れます
| 場面 | もし(きっかけ) | やること |
|---|---|---|
| 小学生 | 学校から帰って手を洗ったら | 漢字ドリルを1ページ |
| 中学生 | 夕飯を食べ終わったら | 英単語を5個覚える |
| 部活で帰りが遅い日 | お風呂から出たら | 今日の授業のノートを1回見直す |
| テスト2週間前 | 朝ごはんを食べ終わったら | ワークの問題を3問解く |
| 休みの日 | 朝の着替えが終わったら | 計算プリントを1枚 |
つまずきやすい場面がわかっているなら、そこにも「もし」を用意しておけます。たとえば「もしスマホを見たくなったら、先に単語カードを1枚めくる」。やめることを決めるより、代わりにやることを決めておくほうが、取り組みやすくなります。
6保護者の方へ:声のかけ方を少し変える
お子さんに家での勉強を続けてほしいとき、つい「いつやるの?」「早くやりなさい」と声をかけてしまいがちです。そこを、きっかけを一緒に考える質問に変えてみてください。
「いつやるの?」「早くやりなさい」
「何が終わったら、やる?」「どのくらいならできそう?」
大事なのは、決めるのはお子さん本人だということです。保護者の方は、決めるのを手伝う役に回ります。できた日は、量より「決めたとおりにできたね」と、決め方をほめてあげてください。
できなかった日も、責める必要はありません。それは「きっかけ」か「量」を見直す合図です。次の章のチェックを一緒にしてみてください。
7うまくいかないときのチェック
| こうなったら | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| そもそも思い出せない | きっかけが毎日起きていない/あいまい | 毎日かならずある行動に変える。紙に書いて目に入る所に貼る |
| 思い出すけど、やる気にならない | やることが大きすぎる | 量を半分にする。「5個」が重ければ「3個」から |
| 「もし」がいつのことか分からない | 「時間があったら」「やる気が出たら」になっている | 目に見える行動(食べ終わる・お風呂から出る)に言いかえる |
| 数日で続かなくなった | 一度にいくつも決めた | 1つに減らして、できるようになってから足す |
8よくある質問
Q. 時刻で決めるのはだめですか?だめではありません。毎日同じ時刻に家にいられるなら「もし夜8時になったら」でも使えます。ただ、中学生は部活や塾で帰る時間がばらつくことが多いので、行動の区切りをきっかけにするほうが続けやすいはずです。
Q. 「5個」では少なすぎませんか?最初は「毎日取りかかる」ことが目的です。取りかかってしまえば、もう少し続けられる日も多いはずです。少なすぎると感じたら、続けられるようになってから増やしてください。
Q. 何歳から使えますか?紹介した子どもの研究は平均10.7歳でした。小学生でも、きっかけとやることを一緒に決めれば十分に使えます。
9まとめ:今夜、1つだけ決めてみよう
「やる」と決めても、約半分の人はやらない。それはやる気が足りないからではなく、決め方に「きっかけ」が足りないからかもしれません。
「もし〜したら、〜する」の形で、きっかけとやることをセットで決めておく。研究でも、大人だけでなく子どもで効果が確かめられている方法です。
今夜のための「もし」を、1つだけ書いてみましょう。
もししたら、
をやる。
書けたら、1回声に出してみてください。
学習塾ペガサスは、さいたま市西区(西大宮駅前)・上尾市(伸学舎・つつじが丘)・桶川市(桶川駅前)・滑川町(つきのわ駅前)の7教室で、小学生・中学生・高校生の個別指導をしています。家での勉強の進め方に悩んでいたら、体験授業でお気軽にご相談ください。体験授業は随時受付中です。
参考にした研究
- Sheeran, P. (2002). Intention–behavior relations: A conceptual and empirical review. European Review of Social Psychology, 12(1), 1–36.
- Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503.
- Sheeran, P., Listrom, O., & Gollwitzer, P. M. (2024). The when and how of planning: Meta-analysis of the scope and components of implementation intentions in 642 tests. European Review of Social Psychology.
- Breitwieser, J. ほか (2026). 子どもを対象にした実行意図の研究のメタ分析(42研究・約1万3千人). British Journal of Psychology.
