「マーカーを引いたのに覚えていない」のはなぜ? 研究でわかった、思い出す勉強法
テスト前、教科書にマーカーをたくさん引いた。何回も読み直した。なのに、テストではぜんぜん思い出せない──。そんな経験はありませんか。
それは、努力が足りなかったからではありません。マーカーを引いて読み直すと、「覚えた」ではなく「見たことがある」の状態で止まりやすいからです。教育心理学の研究では、勉強の時間を同じだけ使っても、やり方によって残り方が大きく変わることが分かっています。
この記事では、マーカーをやめずに、ひと手間足すだけで「思い出せる」勉強に変える方法を、研究と一緒に紹介します。ペガサスのショート動画「勉強のコツ #2」でも、同じ話を約1分で紹介しています。
1マーカーを引くと「覚えた気」になる
マーカーを引いた教科書を読み直すと、どのページも見覚えがあって、すらすら読めます。この「すらすら読める感じ」が、覚えた気のもとです。
教科書を見れば「ああ、これね」と分かる。でも、閉じると言えない。
教科書を閉じても、自分の頭から言える・書ける。テストで必要なのはこちら。
テストでは、教科書は見られません。問われるのは、何も見ずに自分の頭から取り出せるかです。ところが、マーカーと読み直しは「見て分かる」ことの練習にはなっても、「見ずに取り出す」練習にはなりにくいのです。
2研究のまとめ:10の勉強法を比べると
アメリカの心理学者ダンロスキーらは、生徒が自分ひとりでできる10の勉強法について、それまでの研究を集めて「どれくらい役に立つか」を評価しました(2013年)。
| 勉強法 | 評価 | たとえば |
|---|---|---|
| 練習テスト(思い出す練習) | 高い | 教科書を閉じて言う・問題を解く・単語カード |
| 分散学習 | 高い | 一度にまとめずに、日をあけてくり返す |
| なぜ?と考える | 中くらい | 「どうしてそうなるのか」を自分に問う |
| 自分に説明する | 中くらい | 習ったことを知っていることとつなげたり、解き方の手順を自分の言葉で説明したりする |
| 種類を混ぜて解く | 中くらい | 違うタイプの問題を混ぜて練習する |
| 要約する | 低い | 読んだ内容を短くまとめる |
| マーカー・線を引く | 低い | 大事そうな所に色を塗る |
| キーワード法 | 低い | 外国語の単語を、音の似た言葉の場面の絵にして覚える |
| イメージを思い浮かべる | 低い | 文章の内容を頭の中で絵にする |
| 読み直す | 低い | 同じページを何度も読む |
マーカーと読み直しは、生徒がとてもよく使うやり方なのに、成績を上げる効果は小さい、または一貫しないという評価でした。一方で、評価が「高い」とされたのは、練習テスト(思い出す練習)と分散学習(日をあけてくり返す)の2つだけです。
ただし、ここで「低い」は「やってはいけない」という意味ではありません。ダンロスキーが先生向けに書いたまとめでも、マーカーは次の勉強につなげる最初の一歩としてなら使えるとされています。問題は、引いて終わりにしてしまうことです。
3中学2年生の授業でも、「思い出す」は効いた
では、「思い出す練習」は、学校の勉強でも本当に効くのでしょうか。アメリカのある中学校で、中学2年生(8年生)の理科の授業を使って調べた研究があります(マクダニエルら、2011年)。
授業の中で、一部の内容だけを小テストに出しました(4択・答え合わせつき。同じ内容を授業の前後とテストの前日の3回)。そして、小テストに出した内容と出さなかった内容で、その後のテストの正解率を比べました。
同じ生徒が同じ授業を受けているのに、小テストで思い出した内容のほうが、どのテストでも正解率が高いという結果でした。差は時間がたつと小さくなりますが、学年末のテストでも残っていました。
この研究は1つの学校・理科の授業でのもので、どの教科でも同じ数字になるわけではありません。それでも、「思い出す」ことそのものが、記憶を強くするという考え方は、たくさんの研究で確かめられてきたものです。
4マーカーは「隠して思い出す」までがセット
ここまでをまとめると、答えはシンプルです。マーカーはやめなくていい。引いたあとに、隠して思い出す。ここまでを1セットにします。
マーカーの線は、「あとで思い出す練習をする場所」の目印として使えば、役立てられます。
5家でできる「思い出す勉強」の手順
線は少なめに引く
ページ全体が色だらけになると、どこが大事か分からなくなります。用語や公式など、あとで自分にテストしたい所だけに引きます。
閉じて、思い出す
教科書やノートを閉じるか、赤シートで隠して、線を引いた所を何も見ずに言う・書く。小さな声でつぶやくだけでもかまいません。
答え合わせをして、✕の所だけ見直す
思い出せなかった所が、まだ覚えていない所です。全部を読み直すのではなく、そこだけもう一度見て、また隠して思い出します。
日をあけて、もう一度
次の日や2〜3日後に、同じ所をもう一度思い出してみます。「日をあけてくり返す」は、研究で評価が高かったもう1つの方法です。
教科ごとの「隠して思い出す」
| 教科 | 引く(目印) | 隠して思い出す |
|---|---|---|
| 英語 | 覚えたい単語・熟語 | 日本語を見て英語を言う・書く。つづりは紙に書いて確かめる |
| 社会 | 用語・年号・人物 | 赤シートで隠して言う。「〇〇をしたのはだれ?」と自分に問題を出す |
| 理科 | 用語・実験の結果 | 図を見て名前を言う。「なぜそうなる?」を何も見ずに説明する |
| 数学 | 公式・例題の大事な一行 | 例題を隠して、白い紙に最初から解く |
| 国語 | 漢字・古文の単語 | 読みを見て書く。書けなかった字だけ練習する |
学校のワークも、使い方しだいで「思い出す練習」になります。答えを書きこまずにノートに解けば、何度でも解き直せます。
6保護者の方へ:「勉強した?」より「何を覚えた?」
お子さんが長い時間机に向かっていると、安心しますよね。ただ、教科書を読み直しているだけだと、時間のわりに覚えていない、ということが起こりがちです。声のかけ方を少し変えるだけで、家の時間を「思い出す練習」にできます。
「ちゃんと勉強した?」「何時間やったの?」
「今日覚えたこと、教科書を閉じて3つ教えて」「問題を出してあげようか?」
保護者の方が答えを知らなくても大丈夫です。お子さんに教科書を渡してもらい、線を引いた所から問題を出すだけで、立派な「練習テスト」になります。言えなかったときは、責めずに「そこが覚える場所だね」と一緒に確かめてあげてください。
7テスト前のセルフチェック
次のうち、当てはまるものはいくつありますか。
- 教科書のページの半分以上に線が引いてある
- まとめノートを作るのに、勉強時間の大半を使っている
- ワークの答えを、問題集に直接書きこんでいる(もう一度解けない)
- 前日の夜に、全部を一気に読み直す予定になっている
- 「分かる」かどうかは確かめるが、「何も見ずに言える」かは確かめていない
当てはまったものがあれば、そこに「隠して思い出す」を足すチャンスです。全部を変える必要はありません。まずは1教科、1ページからで十分です。
8よくある質問
Q. 思い出せないと、つらくなりませんか?最初は思い出せない所がたくさんあって当然です。思い出せなかった所は「失敗」ではなく、覚える場所が見つかったということ。✕だった所だけをくり返せばいいので、むしろ時間の節約になります。
Q. 赤シートを使えば、それで十分ですか?赤シートは「隠す」道具なので、とても相性がよい方法です。大事なのは、隠したあとに本当に自分で答えを言ってからシートをずらすこと。すぐにずらして答えを見てしまうと、読み直しと同じになってしまいます。
Q. まとめノートは意味がないのですか?作ること自体が悪いわけではありません。ただ、きれいに作るのに時間を使いすぎると、思い出す練習の時間がなくなります。作ったノートも、隠して思い出すのに使ってこそ役に立ちます。
Q. 小学生でも使えますか?使えます。漢字や九九、都道府県なども、「見て書く」より「隠して書く」ほうが練習になります。最初は保護者の方が問題を出してあげると、楽しみながら続けやすくなります。
9まとめ:今夜の英単語から、隠して思い出そう
マーカーを引いても覚えていないのは、引いただけで「覚えた気」になっているから。テストで必要なのは、何も見ずに思い出す力です。
マーカーはやめなくて大丈夫。引いたら、隠して思い出す。ここまでをセットにするだけで、同じ勉強時間でも残り方が変わります。
今夜やる「隠して思い出す」を、1つだけ決めましょう。
今夜、を
隠して思い出す。
思い出せなかった所に印をつけて、明日もう一度。
前回の記事「『今日こそ勉強しよう』が続かないのは、やる気のせいじゃない」で紹介した「もし〜したら、〜する」と組み合わせて、「もし夕飯を食べ終わったら、英単語を5個隠して思い出す」と決めておくのもおすすめです。
学習塾ペガサスは、さいたま市西区(西大宮駅前)・上尾市(伸学舎・つつじが丘)・桶川市(桶川駅前)・滑川町(つきのわ駅前)の7教室で、小学生・中学生・高校生の個別指導をしています。授業では小テストで、前の回の内容を思い出す時間をつくっています。家での勉強のしかたに悩んでいたら、体験授業でお気軽にご相談ください。体験授業は随時受付中です。
参考にした研究
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Dunlosky, J. (2013). Strengthening the student toolbox: Study strategies to boost learning. American Educator, 37(3), 12–21.
- McDaniel, M. A., Agarwal, P. K., Huelser, B. J., McDermott, K. B., & Roediger, H. L., III. (2011). Test-enhanced learning in a middle school science classroom: The effects of quiz frequency and placement. Journal of Educational Psychology, 103(2), 399–414. https://doi.org/10.1037/a0021782
